最初で最後の恋をする
「ううん。一人で大丈夫よ!そんな遠くないし!」
そう言ってみやびはトイレに向かい、その後近くの庭に出ていった。


「うわぁー、綺麗…!」
今日は天気がよく空が澄んでいた為、星空がよく見えるのだ。
空気は冷たいが、とても気持ちがいい。

しばらくみやびは、空を見上げていた。

「いてて…見上げ過ぎて首がぁ…」
首をさすりながら、そろそろ会場に戻ろうとする。


すると近くの茂みが、カサカサ揺れた。

「え……な、何!!?」
茂みの揺れが大きくなる。
カサッと音がして、人が出てきたのだ。

「━━━━━!!!?」

「あ、わりぃ…びっくりさせて!」

「━━━━━」
みやびはあまりの驚愕に、固まっていた。

「おい、大丈━━━━━」

「厘汰ー!親父さんが早く来いって!
…………って、誰?この子」

「あ、武虎(たけとら)
…………さぁ?ねぇ、お前、名前は?」
ゆっくり厘汰が近づいてくる。

(こ、怖い……)
みやびは、ゆっくり後ずさった。

━━━━━━━!!!!?
しかし、ヒールが引っ掛かりみやびは後ろに躓く。

「おい!
危ねっ━━━━━━!!!!?」

バサッと音をさせ、みやびと厘汰が倒れた。

「………っつ…ってぇ…!!
はっ!?おい!大丈夫か!!?」

なんとか厘汰がみやびを抱き締め、手の平でみやびの頭を庇った。
しかし、組み敷くような体勢にみやびは身体が震え出す。

「わりぃ…咄嗟に……!!」
厘汰はみやびを支え、ゆっくり起き上がらせた。
そして、近くのベンチに誘導した。

「あ…い、いえ……ありがとうございます…」
「大丈夫?」
隣に座った厘汰が、みやびの顔を覗き込む。

「はい…////」
厘汰の整った顔と、厘汰を包む感じたことのない雰囲気に、みやびの胸がトクンと鳴った。

「二人共、大丈夫!?」

「あぁ…、武虎。
誰か呼んできてくんね?」
「いえ!大丈夫です!
すぐそこの、会場ですので…」

「へぇー、あんたもこのパーティーの出席者?」

「あんた“も”?」

「あぁ。親父がどうしても来いって聞かなくてな」
「私もです」
「俺もだよ!」
武虎も微笑み言った。

「面倒くせーよな!」

「面倒くさいとは思いませんが、父達が話す内容が恐ろしくて……」
「恐ろしい?」
武虎も反対側に座り、みやびを見つめて言った。

「金の話とかだろ?大人って汚ねーもんなぁー」
厘汰が苦笑いをして言う。
「確かに!
………って、俺達も今年から大人だよ、厘汰」
「は?俺は、そんな大人にはなんねぇよ!」

「今年からって……
貴方がたも、今年成人式迎えたんですか?」
< 4 / 31 >

この作品をシェア

pagetop