最初で最後の恋をする
「どうする?厘汰」

結局、教えてもらえなかった厘汰。
今二人は、近くの公園にいる。

「トトヤに調べさせろよ」
「………」
「武虎!早くしろよ!!」

「…………厘汰、一つだけ聞いていい?」

「あ?」
厘汰は煙草を咥え、火をつけた。

「みやびのこと、本気なの?」

「だから!わかんねぇの!」

「………厘汰は、本気で人を愛さないだろ?
厘茉(りま)の時みたいな思いは、二度としないんじゃなかったの?」


“厘汰、幸せになってね!”

厘茉は、厘汰の従姉で憧れの女性だった。
しかし喧嘩に巻き込まれ、厘汰の目の前で亡くなったのだ。
それから厘汰は、本気で人を愛さないと心に誓っていた。

本気で人を愛すると、その人を失った時、苦しみや悲しみがより強く心に残り壊れるから。



「わかってるっつうの!!
でも……」

「でも?」

「会いてぇの!!もっと話がしたい。
あの笑顔がみたい。綺麗な声が聞きたい。もっと触れたい。
みやびの柔らかい感触、雰囲気、甘い匂いが忘れられない」

「はぁ…てゆーか厘汰……」

「あ?」

「もう…手遅れじゃん!」

「は?」



「もう厘汰……みやびに惚れてんじゃん!!」

ため息混じりに武虎が言い放ち、灯夜に連絡するのだった。


大学を調べ、足早に向かった厘汰。
門前で仲間がいた。

「厘汰さん!」
「ん。で?どこにいんの?」
「そこのA棟の三階です。ちょうど、講義が終わります」

「わかった!サンキュ」

厘汰は、歩みを進めた。

講義室まで行く間、ずっと注目を浴びる厘汰。
「ねぇ!あの人、毒牙組の厘汰様じゃない?」
「厘汰様、素敵……」
「なんでいんの!?」
「編入してきたとか?」
「嘘!?
だったら、いいなぁー!」
「仲良くなるチャンスじゃん!」

「武虎様もいたら、奇跡の二十歳の三人が勢揃いね!」

「うるせー」
怪訝そうに呟く、厘汰。

目的の講義室に着くと、ちょうど学生達がぞろぞろと出てきていた。

その学生達も厘汰に注目する中、何の躊躇もなく講義室に入る厘汰。

講義室内を見渡した。

そしてみやびの存在を認めると、通る声で呼んだ。

「みやび!!」

「え……厘、汰?」
みやびがゆっくり立ち上がる。


タタタッと駆けていき、みやびを抱き締めた厘汰。
「会いたかった……」

みやびの肩に顔を埋めて呟いた。

< 7 / 31 >

この作品をシェア

pagetop