これは、ふたりだけの秘密です
華やかな家族
小笠原家の朝食は、家族揃ってダイニングルームで取るのが習わしだ。
朝七時。居間にある大きな振り子時計が鈍い音を響かせる時刻。
梅雨の晴れ間か、今朝は青空が広がっている。
テラスへ続く大きな掃き出し窓のカーテン越しに、
ダイニングルームには眩しい朝日が差し込んでいた。
部屋の中央にあるのは、十数人はゆうに座れそうなテーブルだ。
七時過ぎに、当主の倫太郎とその妻の和泉が席に着く。
程なく長男の孝臣がスーツ姿でやってくる。
それから長女の彩乃が優雅に座った。
「いただこう」
家長の言葉で、皆が一斉に食べ始める。
カトラリーの音もなくマナー通りに全員が食していくが、それぞれの前には好みに合わせた朝食が並べられている。
家長の倫太郎は毎朝和食と決まっているが、妻と長男はコンチネンタルスタイルだし、長女はダイエット中なのかオーガニックのシリアルとフルーツのみだ。
< 1 / 166 >