これは、ふたりだけの秘密です


「ここは日本だ。フランスとはなにもかも違っている」

ひとり親に対しての政策はフランスほど進んでいない。
郁杜自身、母が出て行ってからは様々な経験をしてきた。

ましてや真理亜は女の子だ。可愛い姪っ子に余計な苦労をさせたくなかった。

怜羽と結婚して、真理亜を片岡家に迎えればすべてがしっくり収まる。
郁杜はこれが一番いい方法だと考えついたのだ。


「俺と、結婚しないか?」

「は?」

究極の選択を、郁杜は怜羽に迫った。

「俺たちが結婚して真理亜を育てる。そうすればお前はあの家を堂々と出られる」

「あ、あなたにはなんのメリットもありません」

突然の申し出を聞いて慌てたのか、怜羽の声は少し上ずっているように聞こえた。

「俺はW&Aの会社を立ち上げたばかりだ。それなりの仕事はしてきたが
片岡家に加えて小笠原家という後ろ盾が出来る。これは大きなメリットだ」

「結婚が……お互いのメリットのためだと?」
「そうだ」

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