これは、ふたりだけの秘密です
(言わなくちゃ、今日こそ言わなくちゃ……)
真理亜の母親のことを郁杜に伝えようと思いながら、どうしても話せない。
焦れば焦るほど、言葉にできないのだ。
もしこの話を受けたら、すぐに家を出て行けるという打算もあった。
『真理亜を……父親のいない子として育てるつもりか?』
その言葉は、ひとりで子どもを育てようと思っていた怜羽には堪えた。
朱里は亡くなる前に、自分に真理亜を託してくれた。
(私に何かあったら、真理亜をどうすればいいんだろう……)
小笠原家の家族は裕福だから真理亜ひとりくらい受け入れてくれる。
だが、あの家族の中で真理亜を育てたくはなかった。
できれば、片岡家のような温かな家庭が理想的だ。
(私が真理亜にできること……)