これは、ふたりだけの秘密です
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怜羽があまりにも親し気に家政婦と話しているのを見て、郁杜は呆気にとられていた。
家族とは目に見えない距離感を感じるのに、
西原とはいつもの怜羽とは思えないほど気安く話している。
「真理亜をシートから降ろさなくちゃ。よく眠っているの」
「俺がやってみるよ」
そっと壊れ物に触るように、郁杜はチャイルドシートから真理亜を降ろした。
まだぐっすり眠っているからか、ふにゃふにゃとして柔らかい。
(こんなに小さくて、温かくて……)
ミルクの匂いだろうか、甘い香りがする姪を郁杜は初めて抱きしめた。
(この子を守っていくんだ……)
颯太の子として生まれてきた子だ。
事情があったとはいえ、自分の子として大切にしよう。
(いや、この子とその母親を自分が引き受けると決めたんだ)
郁杜は改めてその思いを胸に刻んだ。