これは、ふたりだけの秘密です


 *******


怜羽があまりにも親し気に家政婦と話しているのを見て、郁杜は呆気にとられていた。
家族とは目に見えない距離感を感じるのに、
西原とはいつもの怜羽とは思えないほど気安く話している。

「真理亜をシートから降ろさなくちゃ。よく眠っているの」

「俺がやってみるよ」

そっと壊れ物に触るように、郁杜はチャイルドシートから真理亜を降ろした。
まだぐっすり眠っているからか、ふにゃふにゃとして柔らかい。

(こんなに小さくて、温かくて……)

ミルクの匂いだろうか、甘い香りがする姪を郁杜は初めて抱きしめた。

(この子を守っていくんだ……)


颯太の子として生まれてきた子だ。
事情があったとはいえ、自分の子として大切にしよう。

(いや、この子とその母親を自分が引き受けると決めたんだ)

郁杜は改めてその思いを胸に刻んだ。




< 108 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop