これは、ふたりだけの秘密です
「明日の朝、お父様にプレゼントをお渡しするのよ」
いつものことだから、怜羽はなにも感じていないのだろう。
郁杜も家族の縁の薄い人間だが、怜羽にはそれ以上に厳しい現実があるようだ。
(一日でも早く、ここから連れ出してやりたい……)
郁杜が深刻に考えていたら、明るい怜羽の声が聞こえてきた。
「西原さん、私、片岡郁杜さんと結婚するの」
怜羽が西原にサラリと告げている。
「あ、おい!」
「え? 話しちゃダメだったのかしら?」
「いや、先に両親から許可をもらうのが順番だろう?」
「だって……西原さんは私にとって家族同然なんですもの」
その言葉を聞いて、いつも寡黙な西原がこれまでに見たこともないくらい嬉しそうに笑った。
「おめでとうございます! 怜羽さん!」
郁杜の前で、西原はギュッと怜羽を抱きしめた。