これは、ふたりだけの秘密です
(わざわざあなたのために、私と結婚してまでパパになってくれるんだって)
「ばあぶう」
そっと真理亜の頬にキスしながら、
「うふふ、真理亜も嬉しい?」と口に出してみる。
だが、怜羽はいつの間にか自分の頬に涙が流れているのに気がついた。
「あれ? あれ?」
どうして涙が零れるんだろう。
泣くなんて、朱里が亡くなって以来かもしれない。
怜羽はそれが嬉しい涙なのか、悲しい涙なのかわからなくなっていた。
念願だったこの家を出て真理亜と暮らせる道を選んだはずなのに、どうにも涙が止まらない。
(郁杜さん……)
その名を呼べば、また新しい涙がひとつぶ浮かぶ。
(郁杜さん……私……)
それは、自分を支えてくれる人にやっとめぐり逢えた嬉しさと
その人が姪を守るためだけに自分との結婚を決めたという切なさが入り混じった涙だった。