これは、ふたりだけの秘密です
「彼女は、式も披露宴もしたくないと言ってます」
「あの子らしいな」
倫太郎はかすかに微笑んだように見えた。
小笠原家の当主なら娘の結婚に贅を尽くした式や披露宴を期待するのではと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
「それでよろしいんでしょうか?」
深いため息をついてから、倫太郎がゆっくりと話し始めた。
「まず、怜羽のことから話をしよう。結婚のことはその後だ」
「は、はい」
「郁杜君、君はあの子のことをどれくらい知っている?」
「それは……」
「恐らく私も家内も、息子も娘も……なにもわかっていないんだよ」
「は?」
倫太郎からの漠然とした問いに対しなんと答えようかと迷っていたが、
郁杜はその父親らしからぬ発言に驚いた。
「お恥ずかしいが、あの子の育て方には後悔しかなくてね」