これは、ふたりだけの秘密です
「後悔? ですか?」
ますます郁杜の疑問は深まるばかりだ。
「そもそも、どうして私の母にあの子を預けてしまったのか……」
倫太郎はじっと壁一面に飾られた風景画を見つめていた。
「その絵はどなたが?」
「私の母だ。ずっと軽井沢に住んでいた」
「確か、洋画家とお聞きしています。この部屋の絵は軽井沢の風景なんですね」
「ああ……これらは、母と怜羽が描いたものだ」
そう言われてから郁杜が改めて絵を見ると、
いくつもの作品の中に稚拙な絵も混ざっている。
「怜羽が描いたんですか……」
彼女の作品だと思うと、なんだが味のある絵に思えてくるから不思議だ。
伸びやかな筆運び、明るい色彩が彼女の子供時代を連想させた。
絵を見つめながら、ポツリポツリと倫太郎が思い出を辿るように
過去に何があったかを話しを進めた。