これは、ふたりだけの秘密です
「怜羽からは……ほかにはなにも聞かされていないのかい?」
「特にはなにも……もしなにか事情があるなら、彼女から話してくれるのを待ちたいと思っています」
「そうか。なにを聞いても君の気持ちは変わらないと誓ってくれるかい?」
「もちろんです。覚悟して結婚を申し込んでおりますから」
「ありがとう。君に怜羽を任せよう」
明らかにホッとしたように倫太郎が表情を変えた。
「君が怜羽と真理亜を守ってくれている限り、我々家族は君を支援しよう」
「ありがとうございます」
郁杜が欲しかった言葉だった。
小笠原家のバックアップを約束して貰えたようなものだ。
「ただ、怜羽を泣かせるようなことになったら、それまでだ」
「はい、わかっております」
「支援はしないし、もう縁もゆかりもない関係になると思ってくれたまえ」
当主からの、極めて重い言葉だった。気弱な男性なら慄いてしまうだろう。
それでも郁杜は怯まずに倫太郎に告げた。
「私なりに、怜羽さんを幸せにしたいと思っています」