これは、ふたりだけの秘密です
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怜羽の部屋のドアを軽くノックする音が聞こえた。
急いでドアを開けると、廊下には郁杜が立っていた。
「話し合いはどうなったの?」
郁杜に尋ねる怜羽の声は、少し震えてしまった。
父は彼女の決めたことに口を出さないと思っていたが、
さすがに結婚となると反対されるのではと心配していたのだ。
「大丈夫だ。お父さんも認めてくれた」
「ホントに?」
「ああ……」
よかったと言いたかったが、声には出せなかった。
自分が望まれての結婚ではない。郁杜が欲しいのは真理亜だ。
「泣いたのか?」
「……」
さっき、少し泣いてしまったから目が赤かったかもしれない。
「大丈夫。ゴミが入っちゃって……」
慌てて目元をこすってしまった。
郁杜は、怜羽の手を取った。
「かえって目を傷つけるぞ」
そう言うと、そっと怜羽の肩を引き寄せた。