これは、ふたりだけの秘密です
店を出ると、郁杜はツインで建っている高層ビルの方向へ歩き始めた。
「とりあえず、コンェルジュがいるマンションを選んでみた。
将来は真理亜の学校のことも考えるが、今は君が探していた中野駅に近いマンションがいいだろう」
「真理亜の学校……」
「早いかもしれないが、子どもはあっという間に育つって言うからな」
そんな先のことまで考えてくれていたのかと思うと、怜羽の気持ちは揺れた。
今のことを考えるのが精一杯の怜羽は、真理亜が小学生になるころなんて考えてもいなかったのだ。
(この人とずっと一緒に真理亜を育てていけるだろうか……)
どんな未来が待ち受けてるのか、怜羽は考えるのが怖くなってきた。
どこまで生みの母の存在を隠し通せるのか、不安は消えないのだ。
郁杜の後について行くと、そびえ立つ高いビルの前で立ち止まった。
「この、マンションですか?」
「ああ、ここは片岡が分譲していたんだ。たまたま最上階を抑えられた」
「最上階……」
それはかなり高級なものだと怜羽にも理解できた。