これは、ふたりだけの秘密です
内装はあまり変えないことにしたので、八月半ばまでには入居できるらしい。
「家具やカーテンを知人に頼んでおく。君は引っ越しの準備をしておくように」
「は、はい……お願いします」
怜羽は少し残念だった。
これが本当の恋人同士なら、ふたりでカーテンを選んだり家具を買いに行ったりするはずだ。
ひと回り年上の郁杜から見たら、自分はずいぶん頼りないのだろう。
買い物ひとつ任せられないと思われているようだ。
(気にしない。真理亜のことを一番に考えてくれているなら……)
部屋の内装だとか、家具だとか……小さいことだ。
本当の恋人でもないのに贅沢を言わないようにしようと怜羽は決めた。
彼にとって大切な姪を世間から守るための結婚だ。
望まれて妻になる訳でもないのに、我儘を言ってはいけないと自分に言いきかせる。
(それに、郁杜さんは私達のために"家庭"を作ろうとしてくれている)
それだけで十分幸せだと、怜羽は思うことにした。