これは、ふたりだけの秘密です
お盆を過ぎてからも連日の猛暑だ。幼い真理亜には無理をさせたくなくて、
外遊びやお散歩にも行けない日々が続いていた。
その日、怜羽は思い切って真理亜にバスルームで水遊びをさせてみた。
もうひとりでもしっかりお座りできる真理亜はご機嫌だ。
浴槽に真理亜がお座りして丁度いい高さにぬるめのお湯を張り、
おもちゃをたくさん入れてやった。真理亜は大はしゃぎだ。
ばちゃばちゃと手で水を弾いたり、おもちゃを投げたりして
少々の水が顔にかかっても平気で遊んでいる。
「まー」
「楽しい、真理亜?」
「まんまん!」
ママと呼んでくれているふうに聞こえて、怜羽は思わず真理亜を抱き上げた。
「まんまんって、私のこと?」
水遊びをしていた真理亜を抱き上げたのだから、怜羽もびしょ濡れだ。
それでも、『まんまん』という言葉をもう一度聞きたかった。
「真理亜、もう一回行ってほしいな~」
濡れてもいいように、怜羽はタンクトップとショートパンツ姿だったが、
胸のあたりはもうベチョベチョになっている。
「あー」
「やっぱり、聞き間違いだったのかな~」
「なにが聞き間違いなんだ?」
その時、開け放していたバスルームのドアから郁杜が顔を覗かせた。
まだ午後の明るい時間だ。
「え? どうしてこんな時間に?」
「たまたま、会議が……」
郁杜が黙り込んだ。
怜羽が彼の方へ身体を向けたら、なぜか彼女をじっと見つめている。
「郁杜さん?」
怜羽はまったく気がついていないが、むき出しの手足は十分に扇情的だったのだ。