これは、ふたりだけの秘密です
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『寝室は別々にしてください』
ゆっくり夫婦になっていこうと言った手前、郁杜は約束を守った。
夫婦の寝室以外に、子供部屋に怜羽用のベッドを入れる手配をしたのだ。
(われながら、我慢強いじゃあないか)
郁杜は姪のためだからと、怜羽と形だけの結婚をするつもりは無かった。
怜羽と真理亜と三人で、家族になるために結婚すると決めていた。
ただ、怜羽の気持ちが落ち着くまで無理強いしたくないので
婚姻届けを出すのは三人の生活が落ち着いてからにするつもりだった。
いつか夫婦としてその華奢な身体を抱きたいと思っていたが、
彼女の方から別々の寝室をと言われた時に、やっと怜羽の気持ちがわかった。
(彼女にとっては、真理亜のための結婚なんだ)
怜羽と初めて会った日の印象は最悪だったが、
それからは会うたびにひとりの女性としての好意は増していた。
(彼女は自分らしく生きたいと、迷いながらも前に進んでいるんだ。
怜羽の一番近くで、ずっと見守っていこう)
時間をかけて彼女を愛していこうと、郁杜は覚悟を決めていた。
そんなある日、予定していた会議が先方の都合で流れてしまった。
それなら明るい時間に帰宅して、ゆっくり家族と過ごそうと思った。
驚かせてやろうと連絡なしで帰宅してみたら、リビングルームに怜羽たちの姿が見えない。
出かけたのかと思ったらバスルームから、真理亜のはしゃぐ声が聞こえてきた。
(水遊びか?)
何気なく、郁杜もバスルームを覗いてみた。