これは、ふたりだけの秘密です


郁杜の目に映ったのは、怜羽がびしょ濡れで真理亜を抱いている姿だった。

怜羽がいつも着ているふわりとしたブラウスとロングスカートの下に、
こんなにも見事なプロポーションを隠していたとは反則だ。

全体に華奢な身体だが、胸の形は美しく張りがあるし
細いウエストからヒップのラインは見事な曲線を描いている。

「郁杜さん?」

白くすんなり伸び足を見せたまま、郁杜の方へ歩いてくる。

よく見ると下着をつけていなかったのか、
濡れたバストに、小さな蕾がはっきり浮かび上がっていた。

(まずい……)

郁杜の方が狼狽えた。彼の男性としての意識がいきなり目覚めたのだ。

「急に会議が流れて……」

早く帰ってきた理由を並べようと思うのだが、喉が渇いてしまって
スラスラと言葉が出て来ない。

「それなら、少し早めの夕食にしましょうか?」

「あ、ああ。頼む」


怜羽が気を利かせてくれて助かった。
真理亜を抱いたままキッチンの方へと歩いて行く後姿を見つめてしまった。

「このまま、シャワーを使うよ」
「あ、真理亜のおもちゃがまだ中に……」

「大丈夫。片付けておくよ」

「すみません」

普通の夫婦のような会話を交わしながら、ふたりはまだ本当の夫婦ではない。

郁杜はまず冷たいシャワーを浴びて、頭を冷やそうと思った。


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