これは、ふたりだけの秘密です
(最初から話し合っておくべきだった)
今の郁杜には、後悔しかない。
怜羽と普通の夫婦になって、真理亜に兄弟を作ってやりたいと話せば良かった。
真理亜が颯太の娘だからと遠慮してしまったのがいけなかった。
初めて会った時から気になっていたこと、守ってやりたいと思っていること……。
そんな気持ちを隠して暮らし始めてしまったのだ。
いつも通りの平穏な暮らしだけでも、毎日が十分に楽しい。
だが、今日のような刺激を受けると郁杜にだって我慢の限界はある。
(どうしたものか……)
シャワーを浴びて冷静になった郁杜は、これからのことを考えていた。
怜羽に自分の気持ちを伝えたいし、彼女の心が自分に向いていると信じたい。
だが、今の怜羽との生活が心地良すぎて、新たな波風を立てるには抵抗もあった。
(時間をかけるのがいいんだろうか……それとも……)
郁杜にも答えは見つからない。