これは、ふたりだけの秘密です


(やはり、郁杜さんは優しい)

真理亜の姿を蕩けそうな目で見ているし、成長していく様子を見守ってくれている。

(ずっとこのままでいられたら……)

郁杜さんがパパで、私がママで、真理亜がいる暮らしはなんて素敵なんだろう。
嘘をついてまで手に入れた暮らしだが、怜羽にはもう手離せない。


(だから、本当の夫婦になりたいなんて思っちゃダメ)

時々、彼の姿を見てきゅんと胸がときめいているのを知られたくない。

細身だけど以外に筋肉質な彼の身体。
真理亜をヒョイと抱き上げる優しい腕。
真理亜に話しかけるときの柔らかな低い声。

そんなものが毎日、怜羽の目の前にあるのだ。

(手を伸ばせば届くのに、けっして触れてはいけないもの)


望んではいけないと心に刻みながら、今日も怜羽は彼をそっと見つめていた。



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