これは、ふたりだけの秘密です
『ワタシ、捨てられちゃったのかな……』
朱里は目立ち始めたお腹を抱えて悲しそうに呟いた。
『トワに、彼と会っておいてもらうんだった……』
朱里は、怜羽に彼を紹介しなかったことだけは後悔しているようだった。
『だって、彼がもしトワのことを好きになったらどうしようって思って』
彼と会わせなかったのは、そんな単純な理由からだったのよと朱里は告白した。
『恋したら、なにも見えなくなっちゃって。もしかしたら、ワタシは彼を信じ切れていなかったのかもしれないわ』
カタオカは時々、悲しそうな目で自分を見ていたんだと力なく朱里は笑っていた。
朱里には身寄りがいなかった。だから妊娠したのをとても喜んでいた。
『この子はワタシの家族なの。どうしても産みたい』
朱里の切実な気持ちを知って、怜羽もできるだけ力になろうとした。
フランスではシングルマザーでも子育て支援が充実しているから育てやすいし、
働きながらふたりで育てれば、なんとかやっていけるはずだった。