これは、ふたりだけの秘密です
繋がる心



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怜羽は元気になった真理亜と軽井沢に来ていた。

ふたりで夜を過ごしてから、郁杜と顔を合わせるのが怖かった。
郁杜はなにも言わなかったし、マンションへ帰ってくる時間が急に遅くなった。
明らかに避けられていると思ったから、こ怜羽はこに逃げて来たのだ。

東京に比べて秋の気配が一段と濃い軽井沢には、祖母との思い出が溢れる別荘がある。
久しぶりに来たが、管理人が丁寧に管理していたから当時のままの佇まいだった。

古めかしい洋館には、大きな窓から明るい日が差し込んでいる。

屋敷の周りには芝生が植えられているから、真理亜を遊ばせるのにも安全だ。
祖母が丹精込めていたバラ園は規模が小さくなっていたが
秋バラがチラホラと咲き始めていた。

(郁杜さんに嘘をついた時から、こうなるのはわかっていた)

それでも郁杜に惹かれる気持ちを偽ることはできなくて、
彼に求められるまま抱かれてしまったのだ。

そうしたら、怜羽が真理亜を産んでいないのがわかってしまうのに。

(それでもよかった。彼は私を望んでくれたのだから)



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