これは、ふたりだけの秘密です
郁杜は覚悟を決めて、杉山に尋ねてみた。
「怜羽が行きそうなところに、お心当たりはありませんか?」
「おやおや、チョッと心配になる話だな」
新聞を置いて、ロッキングチェアから杉山が立ち上がった。
「もう少し持つかと思ったんだけどな」
「えっ?」
それはどういう意味なのかと、郁杜が尋ねるより先に杉山が言葉を続けた。
「夫婦になるにしては、君たちには距離があったからね」
「距離ですか?」
「上手く言えないが、気持ちの向く方向が違ってるような、すれ違っているような……なんともじれったい距離感だったな」
「それは……」
「好きだったんだろ、怜羽ちゃんのこと。もったいないよねえ」
自分の気持ちが、杉山には気づかれていていたのかと気恥ずかしくなってきた。