これは、ふたりだけの秘密です


「わかっておられたんですか?」
「なんとなくだけどね。あの子のこと気になってるのに誤魔化してただろ?」

始めのころは、怜羽は弟の恋人だったと思っていたから自分の気持ちを告げて彼女を困らせたくなかったのだ。

「はい……」

「取り返しがつかなくなる前に、相手に気持ちを伝えなくちゃ」
「おっしゃる通りです……」

今さらだがなと、杉山の言葉は手厳しい。

「夫婦の時間にだって、限りってもんがあるんだ。うかうかしてたら私みたいにじいさんになってしまうよ」

わざと皮肉っぽい言葉を選んだからか、杉山老人は苦笑していた。

「怜羽ちゃんを幸せにしたいんだろ」
「もちろんです」

再びロッキングチェアに腰掛けてから、杉山がポツリと言った。

「はて……? 怜羽ちゃん、どこに行ったのかな……迷ったら原点回帰かな……」




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