これは、ふたりだけの秘密です



怜羽は単純にそう考えていたが、希望通りにはいかなかった。

残念なことに、朱里は妊娠中に合併症を発症していた。
難産も災いして、産後わずか一月で亡くなってしまったのだ。

朱里は、医師から深刻な合併症だと聞かされていたからか、
『自分に何かあった時には怜羽に子どもを頼む』と公的な遺言状を残していた。

それを読んで、怜羽は泣いた。

誰かのために泣くなんて、生まれて初めてだったかもしれない。
泣いて、泣いて、泣き疲れたとき……。
怜羽は真理亜を自分の子として育てると強く心に決め、すぐに手続きもした。

それが、怜羽にできる朱里への恩返しだ。



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