これは、ふたりだけの秘密です
それから……
春の軽井沢はまずコブシの花が咲き、まもなく梅、桜、桃が一斉に咲き誇る。
旧軽井沢のお寺の境内にあるしだれ桜も見事だが、
ロータリーにあるひときわ目立つヤマザクラも美しいと春になると評判だ。
そんな季節の、よく晴れた日だった。
野の花が咲き乱れる森の中の小さな教会で、内輪だけの結婚式が挙げられようとしていた。
「よく似合っている、怜羽」
「彩乃姉さん、ありがとう」
純白のウエディングドレスを着た怜羽のメイクを仕上げながら、彩乃はご機嫌だ。
「妹の晴れ姿なのよ。怜羽の結婚式は私がオシャレさせるって決めてたんだから。さ、お化粧が出来たからベールをつけましょう」
控室で身支度を整えながら、姉妹はお喋りを楽しんでいる。
「自分じゃないみたい」
「あら、怜羽って結構可愛いのよ。自信持ちなさい」
「こんなに綺麗にしてもらえて嬉しいわ。お姉さんになにかお礼をしなくちゃ」
「ウフフ……。それならうちの商品のパッケージデザインと、プレゼント用のオリジナル商品をお願いしようかしら」
郁杜が間を取り持ってくれたので、怜羽は兄や姉と少しずつ打ち解けられるようになっていた。
孝臣と彩乃も、妹夫婦と新しい関係を築けて嬉しそうだ。