これは、ふたりだけの秘密です
「お前……妹から何倍にして返してもらうつもりだ?」
妹たちの会話を聞いていた孝臣が、呆れたように会話に口を挟んだ。
愛らしいフラワーガールスタイルの真理亜は、孝臣に抱っこされてご機嫌だ。
かつて怜羽が泣いた時になにもできなかったことがトラウマとなって
孝臣は小さい子が苦手だったが、今では真理亜を抱けるまでになっていた。
「なあ、怜羽。結局お前と郁杜くんの出会いっていつだったんだ?」
孝臣がよほど聞きたかったのか、今さらのような疑問を口にする。
「え?」
「やだわ、お兄さんたら。そんなの内緒に決まってるじゃない」
「そんなもんか?」
「家族や夫婦にだって秘密はあるのよ。私だって夫からのプロポーズの言葉は
誰にも言ってないもの」
「ふうん……」
まだ恋人のいない孝臣はピンとこないようだが、彩乃は自説を主張している。
怜羽はベールの陰で、こっそり兄に謝った。
(そもそも人違いから始まったなんて言えないの。ごめんなさい、お兄さん!)