これは、ふたりだけの秘密です


教会の中は、白い花と同色のリボンで美しく飾られていた。
倫太郎と和泉はもう着席しているが、ふたりとも嬉し涙を堪えているようだ。

片岡家からも当主の宗一郎はもちろん、煌斗と優杏夫妻が参列している。
生後半年になる彼らの息子は、今日は三谷に抱っこされていた。


そろそろ式が始まる時間だ。

既に去年の秋に入籍をすませている郁杜と怜羽は、揃って入場する手はずになっている。

ピタリと閉じられている入り口に並んで、ふたりは微笑みあった。
式も披露宴もしなくていいと怜羽は言っていたが、郁杜が家族の思い出を作ろうと
身内だけの式を提案したのだ。
もちろん、本当の夫婦になれた怜羽にも異存はない。

「さあ、結婚式だ」
「はい」

12月には真理亜が一歳の誕生日を迎えて歩き始め、
少しずつだがお喋りらしい単語を話すようになってきた。
年明けからは怜羽が会社を立ち上げる準備を始めたので忙しい日々だった。
ようやく春になって、この日を迎えられたのだ。

怜羽の腕を取りながら、郁杜が真面目な顔を妻に向けた。

「三人で幸せになろう」




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