これは、ふたりだけの秘密です
その言葉を聞きながら、悪戯っぽい笑顔を怜羽が見せた。
「いいえ、四人よ」
軽くお腹に手を当ててみせる。
少し生理が遅れていたので、昨日病院で診てもらったばかりなのだ。
「ええっ!」
突然の妻からの告白に、思わず郁杜は彼女を抱き上げた。
「い、郁杜さん、降ろして!」
「大丈夫なのか⁉」
「大丈夫です! だから、降ろして!」
「やった!」
式の直前だと言うのに、郁杜は怜羽を横抱きにしたままだ。
怜羽が慌てて夫に懇願したが、彼はこのまま祭壇まで歩いて行きかねない。
「怜羽!」
「は、はい……」
「ありがとう」
「郁杜さん……」
郁杜が怜羽をそっと降ろすと同時に、入場を告げるパイプオルガンの響きが聞こえてきた。
「さあ、行こう!」
「はい!」
ふたりの前の扉がパアっと開かれ、大きな拍手と皆の笑顔が迎えてくれている。
祭壇に向かって、郁杜に導かれながらゆっくりと怜羽は歩き始めた。