これは、ふたりだけの秘密です
(朱里を捨てた男を、私は許さない)
朱里は恋に一途だった。
家族の縁に薄かったからか、愛を大切にする人だった。
カタオカという男に、全ての情熱を傾けたと言ってもいいだろう。
(もし、カタオカが真理亜を欲しいなんて言っても絶対に渡さない)
会った事もないカタオカという男に、怜羽は敵意を抱いていた。
『私と彼は真剣に愛し合っていた』と朱里は言っていたが、
怜羽は一度も彼に会わせてもらっていないから、彼女の言葉を信じるしかない。
(なのに、朱里の気持ちを踏みにじった)
カタオカの手掛かりは、朱里のスマートフォンに残っていたほんの数枚の写真。
タートルネックの黒のセーター姿でも、はっと目を引く男性だ。
日本人にしては彫りの深い顔だちで、スレンダーな朱里よりかなり背が高そうだ。
商社マンで裕福な家庭の人だと聞いていたが、それも怪しいものだ。
どんなお金持ちでも、優しい朱里を捨てたなんて許せるものではない。
(真理亜は、私がちゃんと育ててみせる)