これは、ふたりだけの秘密です


真理亜を連れて帰国してからは、いっそう仕事に力を入れた。

モチーフを描いてPCで加工するのは自宅で真理亜を世話しながらできるし、
注文を受けたあと、どうしても打ち合わせに出かける必要がある時は
日菜子にベビーシッターを頼むことにしていた。

パリで働いていた経験のおかげか、帰国してから怜羽の仕事は順調だ。
小笠原の名前は出さず、『TOWA(とわ)』というブランド名で勝負していた。

家族が真理亜を受け入れてくれたことは感謝しているが、
怜羽は一日も早く小笠原家を出て、真理亜とふたりで暮らしたいと思っている。
幼い頃に、家族と深い溝ができてしまった怜羽にとって
真理亜の無垢な笑顔だけが救いなのだ。

(もう少し落ち着いたら家を出よう。小笠原家に頼らなくても自分には仕事がある。真理亜とふたりで生きていける)

怜羽は心の中に、そんな決意を秘めていた。


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