これは、ふたりだけの秘密です
テーブルの上には豪華な夕食が並べられている。
オードブルは好きな物を取り分けて食べるスタイルだが、メインはそれぞれのペースで運ばれてきた。
倫太郎は健康のためか白身魚のポアレのようだが、
その他は肉料理で、子羊のローストだ。ハーブの香りが漂っている。
コルドンブルー仕込みの西原の料理の腕は確かなものだ。
「新製品の評判は上々のようですね」
メインディッシュを食べ終えた郁杜が、彩乃に声をかけた。
「そもそも兄が開発したものを利用したんだけど、私の目指す化粧品にぴったりだったの。あれは飲み薬にするより皮膚から吸収させる方に向いていたわね」
「さすが彩乃さんですね。着眼点がいい」
郁杜はお世辞ではなくそう思っていた。
モデル出身とはいえ、小笠原家の血筋だからか商売がうまい。
「どうして彩乃はあの老舗の化粧品会社に目をつけたんだい?」