これは、ふたりだけの秘密です
フワフワの髪。顔のパーツも大きな目以外は小ぶりだが、ぷっくりとしたピンクの唇が愛らしい。
襟元にギャザーが寄せてあるブラウスにロングスカートというカジュアルな服装だ。
まだ二十歳そこそこだろうかと思ったが、じっと彼を見つめる目には強い意志を感じた。
しかも、何故かその視線には自分への敵意が満ちている。
誰も紹介してくれないので、郁杜は自分から挨拶をすることにした。
「はじめまして、孝臣さんとは高校時代からの友人で片岡郁杜といいます」
「……怜羽です」
ペコリと頭を下げると、その女性はダイニングから出て行った。
ここで家族と一緒に食事をしないのを不思議に思ったが、
誰もなにも言わないので郁杜もそれ以上は彼女のことに触れなかった。