これは、ふたりだけの秘密です


そのまま五人で談笑していたら郁杜のスマホが会社からの着信を知らせたので、
断りを言って廊下に出てから電話を受けた。

ダイニングから離れた位置まで移動し、簡単な仕事の指示を出す。

ほんの数分の会話を終えて郁杜がスマホをポケットにしまうと、
すぐ近くに怜羽が立っていたので驚いた。

おまけに彼女はいきなり郁杜に声をかけてくるではないか。

「片岡さん、あなたパリに行くことはありますか」

「パリですか? ええ、たまにですが仕事で……」

(この娘は何が言いたいんだろう)と不思議に思っていたら、
『ア~ン』と泣く小さな子どもの声がした。

「怜羽さま~、真理亜ちゃんが起きましたよ~」

パタパタと誰かがこちらへ走ってくるようだ。



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