これは、ふたりだけの秘密です
「いや……」
郁杜には親友に説明する言葉もない。混乱していて何も浮かんでこないのだ。
「怜羽……彼になにか用があるのか?」
逆に孝臣が怪訝な顔で妹に尋ねているのを聞いて、郁杜は冷や汗が出た。
目の前の怜羽は、なにを言いだすかわかったものじゃあない。
「そうね、用があるっていえばあるのかも」
焦る郁杜を尻目に、怜羽はけろっと答えている。
(俺を脅す気か?)
意味ありげな言葉だけ残し、怜羽はその場から去ろうとしている。
「どういうことだ?」
気になった孝臣が怜羽の腕を掴んで引き戻そうとしたが、
その反動で抱かれていた真理亜もグラリと大きく揺れた。
「あ~ん」
真理亜の泣く声を聞くと、普段は無表情な孝臣が眉毛を下げる。
「ああ、真理亜、泣かないでくれ~」
彼は子どもの泣き声が苦手なのだ。
真理亜に泣かれると、どうしていいのかわからなくなってしまう。