これは、ふたりだけの秘密です


東京の屋敷で暮らし始めたが両親は仕事で忙しく、すべてに戸惑う怜羽の様子に気がつかない。
年の離れた兄や姉は『何故?』『どうして?』と尋ねてくる怜羽を持て余した。
学校でも自由に振舞う怜羽は浮いてしまい、担任も匙を投げてしまった。

いきなり環境が変わった上に、誰も怜羽を理解してくれない。
見守ってくれる大人も、怜羽の側には誰ひとりとしていない。

そんなストレスからか、怜羽は夜ごと寝ている時に突然起き上がって
悲鳴を上げたり走り出したりするようになってしまった。

いわゆる夜驚症(やきょうしょう)だったが、
驚いた両親は悪い病気かも知れないと怜羽を入院させた。

身体は健康だから、すぐに退院となるが、家ではまた夜になると泣きさけぶ。
その繰り返しに家族は疲れ果ててしまった。

両親はこのことを軽井沢の松代には告げなかった。
東京に帰った途端、怜羽が病気になったとは言えなかったのだろう。



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