これは、ふたりだけの秘密です
結局、まだ若くて家政婦になったばかりだった西原が
毎晩一緒に眠り、泣き出したら抱きしめることを繰り返すうちに
怜羽は次第に落ち着きを取り戻していった。
彼女が求めていたのは、人の温もりや愛情だった。
思いっきり笑って思いっきり泣ける家族との関係が欲しかったのだ。
そんなことがあってから、両親や兄姉は怜羽に話しかけて泣きだしたらと思うと
声をかけずらくなってしまったらしい。
家族としての気持ちはあっても、怜羽になにもしてやれないまま年月だけが流れた。
やがて怜羽も、家族から理解されることを諦めた。
屋敷の中ではなるべく人と関わらず、無気力に過ごすようになった。
ただ、絵を描いている時だけが幸せだった。
怜羽と家族とは、未だに心の距離は遠いままだ。