これは、ふたりだけの秘密です
(私のバカ。こんなことになるなんて……)
本当は、彼に真理亜の父親だなんて告げるつもりは無かった。
ただパリであれほど探しても見つからなかった人が、いきなり目の前に現れたので
普段はのんびりしている怜羽も、さすがに頭に血が上ってしまったのだ。
(朱里のこと忘れて、日本でのうのうと暮らしてたんだ)
そう思うと涙が出そうになった。
しかもお金持ちらしく贅沢なスーツを着て我が家のダイニングで優雅に食事していた。
妊娠した朱里と私がパリの下町で切り詰めた生活をしていた頃も、
彼はこんな贅沢な暮らしをしていたかと思うとカッと心に火がついた。
『真理亜はあなたの子ども』
つい、言い切ってしまったが後には引けない。
怜羽は覚悟を決めて応接室へ向かった。