これは、ふたりだけの秘密です
「怜羽さま~、真理亜さまがお目覚めです~」
その時、のんびりとした日菜子の声が聞こえてきた。
「は~い」
怜羽が応接室から出て行くのをチャンスとばかりに、郁杜は倫太郎に声をかけた。
「怜羽さんと話がありますので、後ほど……」
そう言って、彼女の後を追う。
倫太郎たちから向けられる視線が痛かったが
取りあえずその場から逃れることができてホッとした。
真実がわからないのに、彼らになにも答えられないのだ。
(一刻も早く誤解を解かなければ……)
怜羽の姿を追いながら、郁杜は奥に向かって廊下を進んで行った。
身に覚えはないとしても、あの写真だけが気になっていた。
(俺ではない、俺に似た誰か……)