これは、ふたりだけの秘密です
「はい、お世話になります。お願いしていた件ですか?……」
怜羽は電話を優先してしまったので、あっさりと郁杜は無視されていた。
仕事でもプライベートでも、郁杜はこんな扱いを受けたのは初めてだ。
しばらく相手と会話しながらメモを取っていた怜羽が、
電話を切るなり赤ちゃんを抱いて部屋から出て行こうとした。
「おい、どこに行くんだ? 話が終わって……」
「あ、ごめんなさい。チョッと……」
「は?」
郁杜は、ばたばたと部屋を出て行く怜羽の後を再びついて行く羽目になった。
「日菜子さーん、ごめんなさい。もう少し真理亜をお願い!」
「わかりました~」
さっきと同じ若い家政婦が笑顔で赤ちゃんを抱いた。
家政婦に慣れているのか、赤ちゃんもキャッキャッと声をたててご機嫌だ。
「西原さんにもよろしく伝えてね」
「怜羽さま、お仕事ですか?」
玄関まで見送りに出た家政婦が尋ねているが、怜羽はかなり慌てているようだ。
「急用が入っちゃって。七時までには帰れると思うから」
「時間を気になさらなくて大丈夫ですよ。いってらっしゃいませ~」