これは、ふたりだけの秘密です
「どこへ行くんだ?」
怜羽と一緒に玄関から庭へ出た郁杜は、怜羽に行き先を尋ねた。
彼女の行動が読めないので、これからどうすべきなのか迷っていた。
「うん、チョッと」
怜羽は急いでいるのか、門の方へと小走りだ。
しかたなく、怜羽と少しでも話ができる手段を選ぶことにした。
「だから、場所を言え」
「なんで?」
「車で行こう。少しでも話ができる」
「あなたの?」
怜羽が驚いた顔をした。まさか送ってもらえるとは思っていなかったのだろう。
「ああ、乗せていく」
怜羽から話を聞かないことには、倫太郎や孝臣には答えようもない。
(さっさと話をつけよう。このまま小笠原家に誤解されたくない)
郁杜は小柄な怜羽を愛車に押し込んだ。
自分も乗り込んでから怜羽に行き先を確認する。
「目的地は?」
「あ、中野の駅の近くまで」
港区から中野までなら、中央環状線を飛ばしたら30分少々で着くだろう。
郁杜は少しでも話ができればと思っていたのだが、助手席に座った怜羽は口を閉じたままだった。