これは、ふたりだけの秘密です
「お待ちしていました、小笠原様。お部屋にご案内いたします」
「ありがとう」
如才なく怜羽に話しかけながらも、郁杜の姿を見て若い社員は少し緊張したようだ。
怜羽ひとりなら言いくるめられるだろうが、郁杜が一緒なら難しい仕事になると思ったらしい。
二階のひと部屋に案内された。中に入るとさっそく説明が始まったようだ。
「オートロック付きで、1DK……」
「はい、お家賃は……」
郁杜は少し離れていたが、聞くともなく話し声は耳に入ってくる。
(部屋探し? あんな大きな屋敷に住んでいるのに?)
若い不動産会社の社員は、チラチラと郁杜を見ている。
彼の服装や態度から怜羽との関係を探っているようだ。
(愛人のマンションを探しているようにでも思われたのか?)