これは、ふたりだけの秘密です


「お待ちしていました、小笠原様。お部屋にご案内いたします」
「ありがとう」

如才なく怜羽に話しかけながらも、郁杜の姿を見て若い社員は少し緊張したようだ。
怜羽ひとりなら言いくるめられるだろうが、郁杜が一緒なら難しい仕事になると思ったらしい。

二階のひと部屋に案内された。中に入るとさっそく説明が始まったようだ。

「オートロック付きで、1DK……」

「はい、お家賃は……」


郁杜は少し離れていたが、聞くともなく話し声は耳に入ってくる。

(部屋探し? あんな大きな屋敷に住んでいるのに?)


若い不動産会社の社員は、チラチラと郁杜を見ている。
彼の服装や態度から怜羽との関係を探っているようだ。

(愛人のマンションを探しているようにでも思われたのか?)


< 53 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop