これは、ふたりだけの秘密です
つい怜羽への好奇心でついて来たが、だんだん居心地が悪くなってきた。
その時、隣の部屋から大きな音が聞こえてきた。
喧嘩をしているような怒鳴り声がして、物が壊れた様子もある。
「あ……」
不動産会社の社員は顔を青くした。
「壁が随分と薄いんだな」
コンコンと壁を叩きながら郁杜が言うと、黙り込んでしまっている。
「今日はやめておきます」
怜羽も隣の様子が気になったのか、あっさり断っている。
「では、次の物件を探しておきますね」
「もう少しお家賃出せば1LDK以上の部屋が借りられるのかな……」
「そうなりますと、ご希望の上限金額は超えますね」
郁杜は、会話を聞きながら不思議な気分になってきた。
世間知らずのご令嬢だろうと思っていたが、怜羽は意外にしっかりしている。
頭の回転も速いのか、若手社員もタジタジになっていた。
「それでは、またお知らせいたします」
「よろしくお願いします」