これは、ふたりだけの秘密です
車に乗り込むとき、怜羽はため息をついていた。
女性を愛車に乗せたことは幾度となくあるが、嫌そうにされたことはない。
むしろ、乗せて欲しいと言われているくらいだ。
(変わってるな……こんな子は初めてだ)
横目でちらりと怜羽を見れば、真っ直ぐ前を向いたまま微動だにしない。
緊張しているのか考え事をしているのか読み取れない表情だ。
「子どものこと、きちんと説明してくれないか?」
郁杜が尋ねてからしばらくして、やっと答えが返ってきた。
「あなたに責任を取って欲しくて、子どものことをお伝えしたんじゃありません」
「責任なんて取れと言われても……」
自分の子ではないのだからと言いかけたら、怜羽が話を続けた。
「子どもの存在をあなたが知らないのは、フェアじゃないと思ったからです」
「フェアとは?」