これは、ふたりだけの秘密です


父や兄に郁杜との話を聞かれたのも誤算だった。
おまけに郁杜は怜羽と話しがしたいと、どこまでもついてくる。

確かにすぐ解決できる状況では無いが、郁杜がここまで拘るのも誤算だった。
あっさりと朱里を捨てたくらいだから、子どものことも拒否するかお金で解決しようとするのではと思っていたのだ。

もちろん、お金など受け取るつもりは微塵もない。
挙句、怜羽がマンションを探していることまで知られてしまった。

(この人と関わることになるなんて……)

仕事以外では、どちらかというと人間関係が希薄な怜羽にとって、
片岡郁杜の存在はあまりに大きかった。

兄の親友で、姉のビジネス関係で……。
そんな身近にいた人が、まさか真理亜の父親だったとは信じがたいくらいだ。

(朱里……)

大好きな朱里とその子のために自分に何が出来るのか、怜羽は悩み続けていた。


< 60 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop