これは、ふたりだけの秘密です
混雑する東京駅でも、すぐに郁杜の姿は目に留まった。
今日もスーツ姿がさまになっている。
彼に合わせるつもりはなかったが、怜羽はいつもより少しお洒落をした。
普段はファストファッションが多いが、今日は自分でデザインしたプリントのスカートに少しギャザーの入った白いブラウスを合わせている。
郁杜は昼前に京都駅に到着する新幹線のグリーン車を手配してくれていた。
「会って欲しい人って、どなたですか?」
座席に座ると、さそっく怜羽は尋ねた。
「悪いが、あちらに着くまでなにも言えない」
「そうですか……」
「君に、先入観を持ってほしくないんだ」
「わかりました」
京都までは二時間の旅だ。
怜羽はワイヤレスイヤホンをつけて音楽を聴きながら
持参した小さなスケッチブックにイラストを思いつくまま描いている。
郁杜は、難しい顔をしてなにか英文を読んでいた。
目的地は同じなのに、誰が見ても同行者とは思えないふたりだった。