これは、ふたりだけの秘密です


京都駅からは、郁杜とタクシーに乗り込んだ。

「嵐山まで」

目的地を聞いて、怜羽は首を傾げた。

(嵐山?)

紅葉が美しい秋ならともかく、梅雨時は観光に行くほどの場所ではないはずだ。
怜羽は曇り空を眺めながら、嵐山のどこを目指して行くのだろうと考えていた。

タクシーは30分も走ると渡月橋を越えて、少し奥まった場所に着いた。

「ここだ」

郁杜に促されてタクシーを降りる。

「ここですか?」

そこは重厚な門構えの、怜羽でも知っている高名な料理旅館だった。


< 66 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop