これは、ふたりだけの秘密です
京都駅からは、郁杜とタクシーに乗り込んだ。
「嵐山まで」
目的地を聞いて、怜羽は首を傾げた。
(嵐山?)
紅葉が美しい秋ならともかく、梅雨時は観光に行くほどの場所ではないはずだ。
怜羽は曇り空を眺めながら、嵐山のどこを目指して行くのだろうと考えていた。
タクシーは30分も走ると渡月橋を越えて、少し奥まった場所に着いた。
「ここだ」
郁杜に促されてタクシーを降りる。
「ここですか?」
そこは重厚な門構えの、怜羽でも知っている高名な料理旅館だった。