これは、ふたりだけの秘密です
古風な門をくぐると、そこは別世界だった。
白玉砂利が敷き詰められた前庭は風情があって、
飛び石を歩いていると時代を遡ったような気分にもなった。
「予約した片岡です」
郁杜が告げると、支配人らしい人物が丁寧に出迎えてくれた。
にこやかな和服姿の仲居に案内されて長い廊下を進んで行く。
「こちらでございます」
十畳に床の間付きの和室は、ふたりで食事するには広すぎる。
控えの間まであるし、縁側の向こうには自然豊かな大堰川が見渡せた。
郁杜のネームバリューなのか、ため息が出るような豪奢な部屋に通されたのだ。
「ここに、私に会わせたいっていう人が?」
「ああ、まず食事をしよう」
怜羽はまだ納得できなかったが、郁杜に言われるまま下座の座布団に座った。