これは、ふたりだけの秘密です
驚いた怜羽は、もう一度ゆっくり郁杜と板長だという男性の顔を見比べた。
「そっくりでしょ? 私も驚いたの」
女将が小声で怜羽へ話しかけた。
「お、驚いています……双子みたい」
「歳は7歳離れていますけどね」
「そうですか……」
「板長にご用があるとお聞きしていますから、ゆっくりなさってくださいね」
女将はもう一度礼をすると座敷から出て行った。
郁杜もふたりに気を遣ったのか、立ち上がった。
「俺は少し席を外すから、彼とゆっくり話してくれ」
それだけ言うと、さっさと座敷を出て行った。
部屋に残された怜羽は、ただじっと颯太の顔を見つめていた。
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郁杜は廊下に出ると、渡り廊下の方へぼんやりと歩いて行った。
(怜羽は、かなり驚いていたな……やはり……)
彼女から『父親だ』と言われた日から、ずっと考えていたのだ。
自分とそっくりな人物が、彼女を妊娠させたのではないか。
そして、その人物とは……郁杜自身も会ったことのない弟かもしれないと。
(果たして、会わせてよかったのか……)