これは、ふたりだけの秘密です
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「私、朱里の友達です」
郁杜が座敷を出て行ってから、怜羽は大林颯太に告げた。
颯太は驚いたようにも見えたが、すぐに顔を曇らせた。
迷惑そうにも見える表情だ。
「パリからいらしたんですか?」
「いいえ……帰国したのは三ヶ月ほど前です」
「朱里は……どうしていますか?」
怜羽は一度目を閉じて落ち着こうとした。
颯太に真実を告げるのには、心の準備が必要だったのだ。
「朱里は……亡くなりました」
「えっ?」
「今年に入ってすぐ、亡くなりました」
颯太の顔が、今度こそ驚愕で醜く歪んだ。
「そんな……」
がっくりと力なく項垂れて、今にも畳の上に突っ伏しそうだ。