これは、ふたりだけの秘密です

   
 ******


「私、朱里の友達です」


郁杜が座敷を出て行ってから、怜羽は大林颯太に告げた。

颯太は驚いたようにも見えたが、すぐに顔を曇らせた。
迷惑そうにも見える表情だ。

「パリからいらしたんですか?」
「いいえ……帰国したのは三ヶ月ほど前です」
「朱里は……どうしていますか?」


怜羽は一度目を閉じて落ち着こうとした。
颯太に真実を告げるのには、心の準備が必要だったのだ。


「朱里は……亡くなりました」
「えっ?」

「今年に入ってすぐ、亡くなりました」

颯太の顔が、今度こそ驚愕で醜く歪んだ。

「そんな……」


がっくりと力なく項垂れて、今にも畳の上に突っ伏しそうだ。



< 75 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop