これは、ふたりだけの秘密です
この話は打ち切りとばかりに、孝臣が立ちあがった。
「ではお父さん、先に会社へ行きますね」
「ああ、今日は重役会だったな」
「はい。新薬の開発状況を報告いたします」
「楽しみにしているよ」
長男が席を立ってほどなく、倫太郎も着替えに向かった。
母親と長女が他愛ない話をしていたが、やがてそれぞれ仕事へ出かけて行った。
皆が出払ったので、日菜子はテーブルの上を片付けを始めた。
この屋敷に住み込んでいる西原以外の家政婦は通いで、早番と遅番の交代制だ。
今日の日菜子は早番だから朝食を担当していた。
肩が凝ったのか日菜子がグルグルと関節を回している時に、
小柄な女性がダイニングルームに入ってきた。
この家の次女、小笠原怜羽だ。